ほのかな腐臭の香り漂う生活録o女性向注意o
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また続きまして(笑)空と雲のあいだのいととさんからこれまた蝶素敵なSSを頂きました!!!
うわぁん!!私、ネタお借りして、モエ発散しただけなのに…!
こんな素敵SS貰っていいんでしょうか!(だが 縞は 内心 喜んでいる/こら^^^^
しかもリク題でリクして頂いた「川遊び」をいととさんからも書いてくださったようで!!
亘がとてつもなくまぶしくてかわいらしいです=w=*
いととさん!本当にありがとうございました!!!
うわぁん!!私、ネタお借りして、モエ発散しただけなのに…!
こんな素敵SS貰っていいんでしょうか!(だが 縞は 内心 喜んでいる/こら^^^^
しかもリク題でリクして頂いた「川遊び」をいととさんからも書いてくださったようで!!
亘がとてつもなくまぶしくてかわいらしいです=w=*
いととさん!本当にありがとうございました!!!
キミのエガオはお日さまの味
もうすぐ夏も終わる。
かんかんに照っていた太陽も、モクモクと広がっていた大きな白い入道雲も、煩いくらいに鳴いていたセミの声も、もう後少しで終わる。
暑くて暑くて早く過ぎてしまえばいい、などとつい、思ってしまった俺たちの14歳の一度きりの夏が終わる。
「美鶴ー!!こっち、こっち!!」
夏休みももう、後少しで終わるというある日の日曜日。
俺より少し先を自転車で駆けていっていた亘が、自転車を止めて俺の方を見て手招きをしていた。
同じように自転車で走っていた俺が追いついて、自転車から降りると亘は微笑みながら指差していった。
「ここ。ここから入るんだ!僕の秘密基地!!」
自分達の住んでいる住宅街を抜けて、少し遠出した場所に──そこは、山や森がもうすぐ傍にあって。
どうやら、その鬱蒼とした木々を抜けて少し道を降りるとけっこう大きめの川が流れているらしいとは前から聞いてはいたけど。
けれど散策路になっているわけでもない、その細い道をわざわざ通り抜けてその川まで出るなんて、それこそ秘密基地を作るのが目的の小学生くらいのものだろう。
「・・・・・・・・」
「どしたの、美鶴?ホラ!行こっ!!」
俺の手を引っ張りながらその目の前の、中学生なのに小学生仕様の男の子はハッとして俺を振り返り慌てて言った。
「あ!いけね!自転車隠していかなくちゃ!秘密基地がここから入るってばれたら大変だぁ!」
そういって、木の横の人が通るとおりから見えないように俺たちの自転車をしっかり隠そうとするその男の子は、小学生仕様というよりはもう、そこらへんの小学生より立派な小学生と言ってしまった方が良いのかも知れない。
俺はため息と共に亘に見えないように苦笑した。
「そんな見つかって困るような大層な基地なのか?」
「あ!なんだよ。その言い方?見てビックリしても知らないからね?」
ガサガサと引っかかってくる小枝や、背の高い草を払いながらその道を下る。
何が悲しくて、休みの残りわずかな日に、しかもまだまだ暑さの身にしみる日にこんな重労働をこなさねばならないんだろうか。
課題をやり遂げたら、亘の行きたいところにどこでも付き合ってやるとはいったけれど、まさかこんなところに行かされるはめになるとは思わなかった。
「ここね。滑るから気をつけて」
亘はそう言いながら、ひょいひょいと身軽に先に進む。
運動神経は俺より、良くないはずなのにこういう時の亘の身軽さはそれとは別らしい。
嬉しそうに楽しそうに俺の先を行く姿に俺はもう一度かすかに苦笑した。
「ほらっ!!着いたよ!ここ、ここ!僕の、僕等の秘密の場所!!」
その亘の言葉に俺は思わず顔を上げる。すぐに亘に両手をつかまれ、小走りに木々の間を抜けると目の前に心地良い水音を立てて流れる川の姿が見えた。
護岸もされていない小さな川だ。
俺たちが大股で10歩も歩けば向こう岸に着いてしまうだろう。
眩しいくらいの日の光を浴びて、水面がキラキラと光っていた。
亘は背負っていたリュックからシートを取り出すと川べりに広げ、そこに座ると水筒を出して最近お気に入りなのだという、アイス白桃烏龍茶をコップに入れて俺に手渡した。
「ハイ!喉、渇いたでしょ?」
俺はそれを受け取って口にしながら亘に聞いた。
「亘、それで秘密基地ってどこにあるんだよ?」
「え?だからここだよ」
「は?」
「だから、ここ全部がそうだよ。この川べり全部が僕等の秘密基地!!」
俺はコップをもったまま、思わずポカンと亘を見つめてしまった。
「普通・・・秘密基地って言ったら木の上に作るとか・・・どこか洞穴の中に作るとか・・
とにかく、人目につかないところにあるのをそう言わないか?」
「ここ、滅多に人なんか来ないよ?」
「いや、そうかもしれないけど」
お茶を飲みながら俺が何を言いたいんだろうという目で、亘に不思議そうに見つめられるともう、何も言えなくなる。
訂正だ。
昨今の小学生のほうがまだ考え方としては大人かもしれない。
少なくとも亘の悲しいくらい素直な(と、言っておく)思考力は幼稚園仕様だった。
「暑い日でも木陰もあるし、目の前に水が流れてるから涼しくていいんだ。流れの速くない川だから入って遊べるよ!」
亘はそう言いながら、もうズボンの裾をたくし上げて靴下を脱ぎ始めている。
俺はその姿を見ながら、どうしたもんかとしばらく思案していた。
「ほらぁ!はやくはやく!美鶴もおいでよ!」
案の定、動こうとしない俺を見て亘がじれて、俺の腕を掴んで引っ張ってくる。
いや、だからいくら人目が無いとはいえ、もう、中学生の男二人が仲良く川に入って水遊びってどうなんだ?
相手が女の子ならシチュエーション的に画になって、それなりにこういう展開も許せるのかもしれないけど。それに俺自身がどう考えたってそんな真昼から爽やかな青春!的キャラじゃない事を自覚している分、ちょっと居たたまれない。
けれどまるで子犬が大喜びで、シッポを切れんばかりに振っているような亘のキラキラした瞳を見たらさすがに嫌だとは言えない。
俺は心の中でホールドアップの体勢をとると、諦めて裸足になって亘と川の中に入った。
冷たい。
川の水は想像以上に冷たくて、残暑の暑さを一瞬忘れさせる。
「気持ちいいだろ?」
亘はそう言って全開の笑顔を見せると、川の端へパシャパシャと走っていく。
川の中はけっこう滑らかな石が多い。
はしゃぎすぎて亘ならそれに滑って転びそうな気がして、気をつけろと声をかけようとした途端。
バッシャーンッ!!
思い切り大きな音を立てて、亘が川の真ん中で転んだ。
このあまりにもお約束通りの展開に俺は、怒る気にもなれずにため息をつくとびしょびしょになった亘に近づいた。
「・・・・・転んじゃった」
「・・あのなぁ、亘・・・もう、中学生なんだから少し落ち着きって物を・・」
そう言って亘に手を差し出し、立ち上がらせようと手を掴んだ途端。
グイッ!バッシャーンッ!!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・パチクリ。
「わぁっ!あはっ!やっりぃ!これで美鶴もびしょ濡れだよ!」
頭から水をかぶり、その滴をキラキラ光らせながら亘が俺を覗き込み、ニコニコと笑っていた。
邪気というものが全く無い、多分生まれてすぐの幼子はみんなこんな笑い方をするんだろう、そんなエガオで俺を嬉しそうに見ていた。
「ほらっ!」
そのエガオをとぎらせる事無く、亘は今度は俺に水をかけて来た。
手と足をつかって川の水を叩くように、思い切り俺にかけてくる。
まったく。
まったくな。
お前は俺にこうやっていつも魔法をかける。
目には見えない。形にはならない。でも永遠に解けることの無い魔法を次々かけてくる。
俺が魔導士だったころだってこんな魔法は使えなかったのに。
エガオという魔法。
エイエンという魔法。
シアワセという魔法。
誰よりも誰よりも一緒にいられることがヨロコビに変わる魔法。
俺が持っている暗闇も悲しみも全てを希望と優しさに変えてしまう魔法。
お前が、お前の中にある──幼い素直な感情が俺の全てを変えていく。
「うわっぷ!!」
「お返しだ」
俺は両手で思い切り水をすくうと亘にかけた。
亘は片手で濡れた顔をしごきながら、きらりと目を光らせて更に嬉しそうなエガオを浮かべると前にもまして、手足をばたつかせて俺に水をかけてくる。
「お返しのお返しだっ!!」
──14歳の夏。──亘と過ごす4度目の夏。
──キラキラ光る亘のエガオがすぐ目の前にある夏。
俺は川の水を頭からかぶりながら、眩しいくらい輝く太陽を初めてまっすぐ見ることが出来た。
「はは・・・びしょ濡れになっちゃったねー・・・ハイ、タオル」
亘からタオルを受け取り、頭をゴシゴシ拭きながら二人してシートに寝転がった。
「こんだけ暑いんだからしばらくこうしてれば乾くだろ」
「そうだよね。・・・それよりさ。美鶴お腹すかない?川ではしゃいだら、僕、お腹すいちゃったよ」
亘はリュックに顔まで突っ込みそうな勢いで、なにやら中をごそごそ探り始めた。
そしてリュックから袋に包まれたそれを嬉しそうに取り出すと、袋の中から出して俺に渡した。
「ハイ」
目の前に差し出されたのは真っ赤な真っ赤なトマト。
日の光を受けてそれは赤く熟れた色を輝かせた。
「トマト・・・?」
「これね。千葉の伯父さんが送ってくれたんだ。なんか家庭菜園にはまってるんだってさ。
お日さまの光をいっぱい受けて出来た栄養満点のトマトだよ!」
亘はいいながらカプリとトマトにかぶりつく。
少しだけ、顔をそのすっぱ味でしかめながらも嬉しそうに呟いた。
「う、ちょっと酸っぱい。でも、美味しい!お日さまの味がする!ホラ、美鶴も食べなよ」
上半身だけ起こして手にされたその赤いトマトを口に持っていく。
カプ。
体の中を駆け抜けるような酸味が口の中に広がった。
そして次第にかすかな甘味がその後に続く。
「美味しいでしょ?」
カプリカプリとトマトを齧りながら、亘が俺を覗き込んで言った。
そして空を見上げながら、照りつける太陽を見ながら言った。
「トマトって夏のお日さまの味だね」
一口、二口。トマトを齧りながら俺は微笑みながら頷いた。
「そうだな・・・」
傍に流れる川の優しい水音と、煩いくらいに最後の大合唱をしているセミの声を聞きながら。
トマトを食べ終わってしばらくすると、シートに寝転がっていた亘は寝息を立て始めた。
隣に寝転がってボンヤリ雲を見ていた俺は、その亘の子供のような寝顔に思わず口元が綻んだ。
──ほんとに子供だな。
川に喜んで。トマトに喜んで。幸せそうに昼寝して。
俺はまだ少し湿っている亘の前髪をそっと梳く。
そして、よく見ると口の端に先ほど食べたトマトの種が付いてるのに気づいて、俺は苦笑しながらそっと指先でそれをつまんだ。
その種をそのまま自分の口に含んで思った。
多分、夏が来る度に思い出す。
夏にトマトを食べる度に思い出す。
もう、2度とないこの夏を思い出すだろう。
はじめて太陽を真っ直ぐ見たこの夏を、亘の子供のようなエガオと共に。
安らかな寝息を立てている亘の頭をそっと持ち上げて、自分の片腕を通し腕枕をしてやりながら。
俺はすぐ間近に聞こえる、心地よい亘の寝息を耳にしながらそっと眼を閉じた。
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